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  • 市川里美

対人関係のフォーム(4)

 安定した対人関係のフォームをもっていれば、対人関係の問題は起こらないようにも思えますが、そんなことはないものです。それは皆さんも実体験としてよく感じられるものではないでしょうか。「悪い人じゃなんだけれどね」「いい人なんだけれど、ちょっとね」「私とはうまくいかないけれど、ほかの人とはうまくいっているよう」と。そんな思いになることはあると思います。誰かの顔が思い浮かんでいますか?


 自分も相手も、お互いに安定している対人関係のフォームを持っていても、それでもうまくいかないこともあります。これは「相性」ということになるのでしょう。合わせようとすれば、それはお互いに無理が生じる。ギクシャクする。

 たまにしか会わない人であれば、問題になりにくいかもしれませんが、会社、学校、家庭、距離が近ければ近いほど、微細な相性のずれが大きく感じられるようになります。またささいなことでも、それが頻繁であると、問題が大きくなる。そんなことが起こっているように思います。


 どれほど安定したよいフォームをもっていたとしても、誰とでもうまくいくということではない。なんだかがっかりですね。うまくいかないなんて。


 しかし、「いくら努力してもうまくいかないこともある」と知っていると、精神的健康は保ちやすくなります。「うまくいくようにしたい」と思うことは健康的ではありますが、「うまくいかなければならない」「そうならなければだめだ」と考えることは「不合理な信念」となります。合理的とは言えない考え方です。「〜ねばならない」「〜べきだ」という言葉に現れてきます。この考え方は、視野を狭くしていきます。さらには、うまくいかなければ、「自分が悪い」「自分の努力が足りない」という考え、自分を卑下する、あるいは悲観的な思い込みにつながっていく。うつ状態にもなってしまう考え方です。


「うまくいかないこともある」と知っていれば、心に余裕ができます。それがまたほどよい対人関係へと導くものとなります。

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