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やりきらない勇気 あきらめる勇気  と依存症のこと 

  • 市川里美
  • 9 時間前
  • 読了時間: 3分

「最後までやりきりましょう」、「一度始めたならば、簡単にやめない」。このようなことばは、小さいころには大人から聞かされたように思いますし、大人になってからは、自分を戒めることばとしても反芻されているように思います。長期的に取り組むこと、時間を忘れて没頭することは、概ね「良いこと」と受け取られています。そこに向けての努力は称賛の的となり、奨励されるものとして認識されているでしょう。


「やりきらないで終えましょう」や「あきらめましょう」ということが、「良し」とされる場面にはなかなか出会えません。すぐにあきらめるような人は、不真面目な人、だらしない人、信用できない人としてとらえられてしまう。一方で、うつ病になりやすい人の性格として、「まじめ」「几帳面」ということが挙げられています。仕事を完璧に仕上げようとあきらめずに取り組む、細部に渡り心配な点を取り除こうと勤務時間を忘れて没頭する、といったことは、「仕事熱心」と高く評価されそうですが、行き過ぎれば心身のバランスを崩し、うつ病につながると言われます。


 摂食障害になる人にも、このような真面目で、頑張り屋さんが多いようです。食事量や運動量を詳細に決め、自分が決めた計画をやり遂げられる頑張り屋さんです。真面目で最後までやりきる力を持っているがゆえに、病気に陥るまでがんばってしまう。疲れたなら休む、食べたくなったら食べる、という当たり前の行動ができなくなっていく。食べてはいけないと思っているのに過食してしまう。生命を維持するうえで大切な生理プログラムが破壊されてしまうほどの真面目さで、がんばることができてしまい、体内にある自然な行動プログラム、生理プログラムを自ら破壊してしまう。


 ゲーム依存症の人も同様です。楽しんで疲れたら休む、食事の時間になったらやめられる間はよいですが、寝食を忘れるほど没頭する状態となったときには、生きるためのプログラムが破壊されているのでしょう。自分で自分をコントロールできなくなる。やめたいと思っているのにやめられなくなるのは、脳内の制御装置が破壊されているということです。ゲーム依存症の人の脳が、アルコール依存症やギャンブル依存症の人と似ていると言われるのは、同じことが脳で起こっているということです。その結果が、病気、障害です。一度壊れたプログラムはなかなか元には戻らない。なので、「やりきらない勇気」「あきらめる勇気」、途中でやめることが大切になります。


 これまで依存症は、養育環境等の情緒的なことが要因として主に挙げられてきましたが、依存症になりすい遺伝子を生まれながらに持っている人も多いということがわかってきています。日本人は、勤勉で、几帳面といわれ、その性質を持っている人が多い。ギャンブル依存症になりやすいと言われています。しかし、持って生まれたものといっても、我々は遺伝子だけに左右されているわけではありません。環境によって遺伝子の在り方も変わってくるのです。病気や障害と言えないまでも、オタク、コレクター、ポイ活、推し活など趣味と言われるものに、とことん追求していってしまう性質はよく見られることですし、自分の中にあるそのような性質を自覚している人も多いかもしれません。ただ、病気や障害となっていないのであれば、上手に調節できているのだと思うのです。病気に陥らない環境に置かれているのかもしれませんし、どこかで、「やりきらない」、「ほどほどにしておく」という意識を持っているのかもしれません。「やりきらない」、「あきらめる」という一見「良し」とはしがたいことが、実は心身の健康を保つことにつながっていくように思います。

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