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  • 市川里美

アタッチメント・スタイル(3)回避型と恐れ型

 赤ちゃんの頃の親との関わりのあり方は、その人の生涯に渡っての対人関係に反映されていきます。アタッチメントのあり方は、対人関係の土台となり、そこにはいくつかのパターン(型)が見いだされています。その型を「アタッチメント・スタイル」と言います。大人のアタッチメント・スタイルには、安定型、アンビバレント型、回避型、恐れ型があります(ほかにも研究によっては、「未解決―無秩序型」「軽視型」などの名前もあります)。今回は、回避型と恐れ型についてみてみます。


 回避型の人は、人と親しくなることに緊張し、落ち着かない感じになります。自分に近づいて親しくしようとしてくる人がいれば、不快に感じます。さらには、「信頼できるのは自分だけ」「人は信頼できない」と思っていますので、困っていても人に頼ることを考えません。そもそも自分が困っているかどうかもわからないということもあります。それほどに人に頼りたくないのです。自分は困っていないと信じ込む。少しでも頼りたい気持ちが出てくれば、それを抑えてしまう。人と距離を置いて、親しくなることを回避することでなんとか安定しようとする様子から「回避型」と言われます。近づこうとする気持ちが生じた時には、拒否されるかもしれない、という怖さがとても強いのです。これが強いタイプを「恐れ型」と言います。

 一見外交的に見える人もいますが、それは表面的なもので見せかけのものです。心の奥底では人と気持ちをわかちあうことも、打ち解けることもありません。相手が困っていても、それを助けようとしたりする気持ちも起こらず、困っている相手に対しては敵意を持つことさえあります。それは拒否されることを最小限にするためなのです。自分が近づくと拒まれるかもしれないという気持ちがあるのです。拒まれて傷つかないようにするには、こちらから相手を拒否しておけばいい。相手の気持ちも、自分の気持ちも気づかないほうがよいのです。自分の存在が脅かされないようにと、いつも壁を作ってなんとか安心を得ます。

 人の表情が読み取ることが難しいということもあります。多くの人から見れば穏やかな表情の人を見て、「怒っている」と読み取ってしまうことも起こりがちです。

 

 赤ちゃんの時に、守ってくれる人(養育者)に近づこうとしたけれど、守ってもらえなかった、拒まれたといったことから、安定したアタッチメントを形成できなかったのではないかと考えられます。


 

 ここまで、3回に分けて、アタッチメントについて書いてきました。安定型のアタッチメント・スタイルの人は、一般人口の4割から6割といわれています。半分くらいの人は安定したアタッチメント形成ができているといえそうです。

 安定型はパーフェクトで、対人関係上の問題は起こらないように思えてしまいますが、安定型の人も対人関係で悩みますし、夫婦間の問題も起こります。信用できない相手、自分を脅かすような相手であれば、恐れますし、回避したいという気持ちも生じるでしょう。また大切な人を失くすなどの大きなストレスに晒された時には、心が傷つき、うつ病が引き起こされることもあるでしょう。安定型だから安泰というわけではないのです。

  

 以前の研究では、幼少期のアタッチメント・スタイルが一生継続するとされていましたが、幼少期以降でも安心なアタッチメント関係を持つことができると、安定型のアタッチメント・スタイルに変化するという事例が報告されています。アタッチメント・スタイルは、大人になっても変化させることができるものなのです。

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