「不安」はどこから来るのか?(4)遺伝子のこと
- 市川里美
- 5 日前
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不安の元になるものとして、身体内部で起こるホルモン分泌との関連を前回書きましたが、もう一つ不安と関連する身体内部の要因があります。それは遺伝子です。不安を感じやすい遺伝子を持って生まれ、生まれ持って不安を感じやすい、心配な気持ちが起こりやすい、ということがあります。そこには、不安遺伝子といわれるセロトニントランスポーター遺伝子の存在が指摘されています。しかし、この遺伝子は日本人の8割以上が持っているとも言われ、これだけで不安になりやすいことを説明できないとも思います。
ただ、赤ちゃんを観察していると、生まれたばかりの時でも小さな物音にビクッとしたり、初めての場所で泣き続けたりする赤ちゃんもいれば、多少の物音がしてもすやすやと眠っている赤ちゃんもいます。胎内環境の影響もあると考えられますが、もともと持っている遺伝子がそのような違いを表しているといえると考えられます。
大人になってくると、どこからが生まれもったもの(生得的要因)で、どこからが経験されたもの(後天的要因)であるかの線引きはなかなか難しくなります。不安がどこから来るのか?と考えても、わかりにくくなります。また、遺伝子といえどもそれは必ずしも固定化されたものではなく、その後の経験や環境によって変化することもあります。安心できる環境、周囲の人のことばかけや対応、栄養摂取など後天的な要因によって、遺伝子から表されるものは変わってくると言われます。
しかし、「三つ子の魂百まで」ということわざがあるように、幼いころの性格や気質は変わりにくいということが大いにあるといえるでしょう。そのような点からみると、自分自身の持って生まれたものに合わせ、生きやすい環境を選択するという方法もよいと思うのです。不安が強い性格を克服していこうという道筋だけですと、大変苦しくなることもあります。幅広く、いろいろな選択肢を持ち、自分に合ったものえお選んでいくことも不安への対処の一つになると思います。
先ほどの不安になりやすい赤ちゃんも、抱っこして安心させてあげることでが大切です。「泣かせておけば、いずれあきらめて泣き止む」という考え方もありますが、心細く不安で恐怖さえも感じているときに助けてくれる人がいる、安心させてくれる人がいる、という経験が不安に打ち勝つための底力になっていきます。「北風」よりも「太陽」なのです。
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