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  • 市川里美

アタッチメント・スタイル(1) 〜対人関係の土台となるもの〜

 掃除機やドライヤーなど、電気製品の付属品や付け替え可能な部品のことを「アタッチメント」とよびます。本体にくっつけたり、取り付けて使うものを指しています。心理学でのアタッチメントも同様に、自分を守ってくれる人に「くっつく」行動のことをいいます。危険な時に身を守ってもらうため、不安な時慰めてもらうために「くっつく」。くっつくことで、安心や安全を得ようとします。この行動は、生まれながら(生得的)に持っているものです。人に限らず、他の哺乳類も生得的に持っている行動です。生まれながらにして、赤ちゃんは親にくっつこうとし、それに対し親が反応し声かけをしたり、慰めたりします。相互的な関わりが始まります。これが「アタッチメント・システム」です。「怖いな」「不安だな」と感じた時に、親にくっつく。親が守ってくれる。不安なことがあっても慰めてくれる。そのような親の反応が心理的安心をもたらし、さらには、他者への信頼と自己への信頼を生み出します。そうでないときには、他者が信頼できず、怖くても不安でも、誰かにうまく頼ることができず、ひとりで不安を抱え続けるということが起こりますし、情緒的に非常に不安定になります。


 赤ちゃんの頃の親との関わりのあり方は、その人の生涯に渡っての対人関係に反映されていきます。幼少期のアタッチメントのあり方が、対人関係の土台となるのです。大人になった時のアタッチメントのあり方には、いくつかのパターン(型)が見いだされており、その型を「アタッチメント・スタイル」と言います。大人のアタッチメント・スタイルには、安定型、アンビバレント型、回避型、恐れ型があります(ほかにも研究によっては、「未解決―無秩序型」「軽視型」などの名前もあります)。


 安定型の人は、比較的すぐに人と親しくなることができます。人に頼ることについても、頼られることについても嫌に思うことが少ない。自分の感情を理解し、うまく調整できますし、相手の感情を正しく理解することもできる。自分のあるがままの姿を受け入れて自信があり、自己肯定感も高い。人に冷たくされたり、逆に近づきすぎたりされても、さほど思い悩むことはありません。恋愛関係においても、パートナーの苦しさに対して共感的に慰めることもできる。良い関係を持続できます。赤ちゃんの頃、親にくっついた時に、適切に守ってもらい、慰めてもらい、不安を抱えてもらえ、安心できた。このことが土台となって、人との関わりをポジティブに捉え、バランスの取れた対人関係を持てるということが言えそうです。


 一方、そのほかのアタッチメント・スタイルでは、良好な対人関係を維持することがとても難しい。人に近づきすぎたり、逆に距離を取りすぎたりと、ちょうど良い距離が見つけにくい。他者との関わりには、「信用できない」「傷つけられるかも」といったネガティブな気持ちが生じやすく、そのような思い込みが先行して、他者の持っている本当の感情を理解することができない。それよりも自分の中に生じた不安が大きく、どうすればよいかわからなくなってしまう。または、そんなネガティブな気持ちなどないように明るく振る舞うことで、何とか安定しようとする。赤ちゃんの頃、親にくっついた時、親がいつもいなかったり、気まぐれな反応で慰めてくれたと思えば、怒るというように一貫性がなかったり、くっついても無視されたりということがあれば、人に頼ったところで安心できない、頼るとかえって傷つき、怖い思いをする、ということが対人関係の土台となっていく。


 次回には、アンビバレント型、回避型、恐れ型の特徴について書いていこうと思います。

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