「キャンセル界隈」という心理的防衛
- 市川里美
- 8月5日
- 読了時間: 2分
「お風呂キャンセル界隈」、「外出キャンセル界隈」、「ごはんキャンセル界隈」など…いろいろな「キャンセル界隈」が登場しているようです。普段の生活の中での当然やるべきことを、「キャンセルする」とあえて自ら表明し、SNS上で他者と共有することが目的のようです。「そうだよね」、「それでいいよね」と共感を得ることで、自分の行動を正当化し、安心を得たいという心理が、そこには見えてきます。
自分のコンディションに合わせて、日常のスケジュールを調整するという行動を、特に公に表明する必要性はないのでは?とも思います。しかし、相手に気づかれてしまう前に言ってしまおう、言ってしまいたい、という気持ちなのでしょう。この裏には、「嫌われないように」、「顰蹙を買わないように」、「悪く言われないように」したいという期待が見えます。「界隈」というワードを介在させることによって、ちょっと軽い感覚に持っていきたい。「みんな軽蔑しないでね」と、罪悪感の軽減という意味も合わせ持っているようにも思えます。
世間体から外れることになる怖さがあり、恥にもなりうる行動だと感じているからこそ、心理的な防衛として、先に表明する。防衛しなければならないほどに、無理を重ねているのではないかと心配になります。「キャンセルしたい」という背景には、「これ以上頑張れない」、「もう無理だ」という状態にあることもうかがわれるのです。さらには、少々の「キャンセル」で、自己調整がうまくいっており、心理的健康が保たれているのならばよいのですが、次第にセルフネグレクトという深刻な状態に陥っていないかとも、考えてしまいます。
タイパ、コスパ、スぺパ等々、効率や良好なパフォーマンスを求められ、過剰な情報があふれる中で、何をどうすればよいのか見失いそうな様子がうかびます。心理的にも、脳機能的にも疲弊しているのでしょう。「キャンセル界隈」と発信することは、自身の努力不足や、自責的な感覚をなんとか緩和しようとする発言ともとれるのです。
日常のやるべきことを、特段の負荷も感じずに自然にできる状態で毎日を送る。それが、心理的にも身体的にも健康な状態です。そんな毎日を維持するためには、情報や、周囲の環境に惑わされず、自分自身が何を求めているのか、第一に優先したいものは何か、手放してもよいと思えるものは何かについて、自分軸で考えていくことが助けになるように思います。


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