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市川里美

気づきにくいストレス        最後の1滴であふれだす


 ストレスが体に生理的な変化を生じさせることは以前書きました。身体はストレスに対しちゃんと反応し、「ストレスを感じているよ」とメッセージを出しているのですが、なかなかそれに気づきにくい。明らかに「これ、ストレス」と自分自身が感じている時には、対処しようとしますし、逃走か闘争か(逃げるか闘うか)という判断もし、それを行動に移すことも可能となります。


 問題は気づきにくいストレスです。


 とても小さい気づきにくいストレスが重なるときです。ひとつひとつは小さいので「これぐらいはストレスではない」と思ったり、「たいしたことない」と見えなくなってしまう。今のコロナ禍での小さいストレスも多くあります。「しかたのないこと」「みんなも同じだから」ということで見えにくく、気づきにくくなる。気温、気圧の影響も気づきにくいストレスです。

 小さいので対処せずにいると、いつしかなみなみと溜まったところに最後の1滴が加わりあふれ出してしまうということが起こります。イライラしてケンカにもなりやすいでしょう。許せていたことが許せなくなったりもします。突然怒りが爆発したり、ささいなことで泣き出したり、声が聞こえなくなったり、寝込むほど体調が悪くなってしまったり。一つ一つは小さいことなので、それらが原因とは思えず、どうしてそうなるのかわからなくなります。

 それから、一般的にうれしいと思われること、よいと思われることも気づきにくいストレスになります。結婚、栄転、出産、入学、就職...。大変喜ばしいことですし、自分にとってもうれしい、幸せと思っていることなのですが、そこでは大きな変化が伴います。それがストレスとなるのです。


 身体や心はメッセージを届けています。「気力がでない」「疲れやすい」「集中できない」「食欲が出ない」「食欲がありすぎる」「眠れない」「眠くてたまらない」。そんな変化の背景に小さいストレスがあるかもしれません。最後の1滴であふれ出してしまうと、よい状態に戻すまでに多くの時間が要ります。小さいストレスに気づいて、早めのメンテナンスを。


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