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  • 市川里美

正しい子育てについて。心理学研究から言えることは?

更新日:2020年12月19日

『子どもの養育に心理学がいえること 発達と家族環境』 H.R.シャファー著 無藤隆・佐藤恵理子訳 新曜社(2001)


 「子どもは、3歳まで膝の上で育てなさい」と聞いたことがあります。本当でもあるし、嘘でもあるように思います。子育てに何が正解かなどわからないのです。そのことをこの本で学びました。多くの心理学研究を丹念に読み込み、重ね合わせ、タイトル通り『子どもの養育に心理学がいえること』をまとめています。「両親の離婚が子どもにとって有害か」「母親は働きに出るべきか」「体罰は心理的に有害か」「傷つきやすいのはどんな子どもたちか」などトピックに挙げ、これらについて心理学研究から言えることを示しています。子どもの育ちに常識と思われていたこと(例えば読み聞かせをすることと子どもの育ち)には関連性が示されず、一方で強力な関連性が示されるものもあります。

 その”強力な関連性が示されるもの”をみていくとそこにあるのは、その子の持って生まれた個性に合わせた育て方をしていくことなのだと私には思われました。親ができること、先に生まれていくばくか早く大人になったものが子どものためにできることは、安心できる環境の中で、その子の持っているものに合わせた関わり方をすることであり、そのことはその子にとって一生の大きな心の支えとなるように思えます。

 「子どもは、3歳まで膝の上で育てなさい」。不安でお母さんから離れることを怖がる子どもは膝の上で育てるくらいの気持ちでいるのがよいのでしょう。無理に母子分離することがトラウマとなる可能性も高い。一方、好奇心旺盛なお子さんにとって膝の上で育てられることは、がんじがらめでストレスとなってしまうでしょう。

 子どもの育ちは複雑です。しかし、だからこそ豊かであるとも感じさせられます。その豊かさに合わせた「正しい子育て」というものは一つではない。「わからない」を抱えながら試行錯誤し、子どもの様子をみながら理解し、よりベターなものを選択していくしかないようです。



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