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心理カウンセリングで行われることとは?「話を聞くだけ?」(2)

市川里美

 心理カウンセリング(心理面接、心理療法)では何が行われれるのか。ただ話を聞くだけではないことは確かなのですが、疑問に思われる方も多いと思います。臨床心理士や公認心理師といった心理の専門家は、心理カウンセリングについて伝える努力をもっとしなければいけないのだろうとも思います。心理カウンセリングで起こることについて、今回はその続き(2)です。


③パーソナリティの変容

 週に1回から2回の頻度、あるいは精神分析の手法では「毎日分析」という週4日以上の頻度でのものもあるのですが、その頻度で長期間(1〜2年以上)かけて行う心理カウンセリングでは、パーソナリティの変容が起こるでしょう。パーソナリティとは、その人の持つものの見方、捉え方、感じ方、他者との関わりのあり方など、その人らしさのことを言います。 

 ネガティブなものの見方が強く、つらい思いばかりが募ってしまうということがあれば、そのものの見方が変わってきて、気持ちが楽になるでしょう。これまで気づかなかった感じ方や行動、例えば、相手の機嫌を損ねないようにと人を優先するあまり自分を後回しにしてしまうことに自分では気づかず、しかしその中で自分の存在がどうでもいいように思えていたような時に、自分のその行動や感じ方に気づく。そして相手と自分が対等だと感じ、自分を主張できるようになり、自分を肯定するという気持ちが生まれてくることがあるでしょう。

 自分では気づくことが難しかった、感じ方、ものの見方、考え方、行動に自分自身で気づくこと、それが心理カウンセリングで起こります。自分には「こんな心の傷があったんだ」と気づくことも起こるでしょう。心の傷を癒すことにもつながります。このように、心に変化をもたらす技術を心理の専門家は持っています。その変化が安全に起こるように配慮をする技術も持っています。あまりにも急激な変化は危険な場合もありますので、時間をかけてゆっくりと取り組みます。


 長期間の心理カウンセリングの中では、カウンセラーとの相互の関わりが深まり、日常では気づかずに通り過ぎてしまうような感情が、心理カウンセリングの空間で生まれることがあります。日々思ったこと、いま感じたことをカウンセリングで話しているうちに、過去の忘れていたことを思い出したり、悲しみ、イライラ、哀れみ、怒り、恐れ、不安など、感じるとつらくなる気持ち、普段は抑えていたものが出てきます。その感情を見つめていきます。また、言葉にならない思いのやりとりも起こってきます。言葉にならないものを感じることも、パーソナリティに変化を起こしていきます。


 なお、「週に1回から2回の頻度」と書きましたが、月に1回の頻度でも変化は起こります。お一人お一人に合わせて頻度を決めることが大切です。

 

④専門家からの情報提供 アドバイス

「つらい状態だが、精神科を受診した方がいいのだろうか」「病気ではないと思うが、どうしてこういうことが起こるのか」「家族がつらい状態だが、どうしたらいいのか」といったことについて、具体的な情報を提供したり、アドバイスをするということも心理カウンセリングで行われます。個人、一般ではなかなか得られにくい専門的な情報を得て、それを利用して問題の解決へつながることが考えられます。

 

 いずれにしても相談者とカウンセラーとの関わりの中で、新しいものが生まれるということが言えそうです。その過程(道のり)に山登りのパルシェのように共に歩き、支えていく、その専門技術を持つものが心理の専門家と言えると思います。


 次には、心理カウンセリングについてもう一つ、私論を書きたいと思います。

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