以前、中学生から「カウンセラーって、話を聞くだけでしょ」「楽だよね」と言われたことがありました。病院の精神科医師からも「この患者さんは、とにかく話したい人だから、聞いてあげて」と言われることもありましたし、「聞くだけでいい。何もしないでいいから」という依頼もありました(それは無理な話で、カウンセリングでは何らかの変化は起こってしまうのですが)。
心理カウンセリング(心理面接、心理療法)についてもう少し知っていただくことに、臨床心理士や公認心理師といった心理の専門家は努力しなければいけないのだろうと思います。
それでは、心理カウンセリングで行われることはなんでしょうか。一体なにをしているのでしょうか。何が起きるのでしょうか。考えてみると、4つのことがあげられるように思います。まずはそのうちの2つについてです。
① 傾聴によってもたらされるカタルシス
「今まで誰にも話せなかった。話せてすっきりした。」「しっかりと聴いてもらえた。」ということで得られるカタルシスの感覚が起こることが挙げられます。具体的な結果が得られたり、良い解決法が見つかったわけではないけれども、とにかく「話せてすっきりした。」「言えないことを吐き出せた。」という感じもあるでしょう。これには上述したように、一見すると「ただ話を聞くだけでしょ」と、誰にでもできるようにも思えてしまいますが、この話してすっきりしたという感覚が得られるということは、しっかりとした専門技術があることが前提となります。「ただ話を聞いている」ようで、そうではないのです。相談に来た方の言葉やその話し方から、専門家としてさまざまなものをキャッチし、それに応じようとしているのです。すっきりとした感覚だけで、解決や変化にはつながらないかもしれませんので、「何も教えてもらえなかった」「変わらなかった」という思いを持たれることもあるとは思いますが、実は何かが変わり始めているのです。1回の心理カウンセリングだけでもこのような感覚を持つことは可能だと思います。
② 人に話すことによって、客観的視点を得る
上述のカタルシスに加えて、なんらかの気づき、客観的視点、新たな視点を得られるという感覚が生まれることも心理カウンセリングで起こります。カウンセラーはアドバイスもせずに聴いているだけであっても、安心した空間で、しっかりと聴いてくれる人に話す、ということで、あらたな視点が得られ、光がさしてきたような感覚を持つということも起こります。話をしているうちに自然に自分の中から解決策が見えてくることもあります。週に1回、あるいは隔週に1回程度の頻度で、4、5回から15回程度の心理カウンセリングで得られる感覚と思われます。また、この感覚は心理カウンセリング中に生じるだけではなく、日々の生活の中で、ふと変化が引き起こされたり、ふと変化を感じる、ということで気づくことも多いように思います。
あとの2つについては、次に書きたいと思います。
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