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市川里美

対人関係のフォーム(2)

 幼少期から安定的な対人関係の土台を作ることができ、ほどよいフォームが出来上がっていても、相手によってはそれを崩されてしまうことがあります。非常に悪い対人関係のフォームを持った人と出会うとほどよいフォームも崩れていく。


 たとえば会社で、隣りの席の人が悪いフォームを持っているとき。その人は、とても機嫌がよい時と、悪い時がある。機嫌の良い時には、元気よく挨拶もし、やりとりもとても穏やか。しかし機嫌が悪いと、声をかけても無視される。かかってくる電話も取らない。表情から見ても怒っているようで、隣にいてとてもピリピリとした緊張感がある。気を遣わなければならない感じがしてくる。会社ですから、仕事上のことでやむなく話しかけなければならないときには、「こちらが何か悪いことをしたのかもしれない」と思わされてしまう。ビクビクして、なぜかこちらが謝ってしまう。そうしている内に精神的にまいってしまう。精神科外来を訪れるほどに。


 夫婦間でも起こります。お互いに「この人と一緒に」と思って結婚生活が始まるのですが、一緒に暮らしているうちに何か噛み合わない感じがしてくる。D V(ドメスティック・バイオレンス)とはっきり言えるような暴力や暴言はない。「外に行ってはいけない」といった行動の制約もしない。「今月の生活費はこれだけ」と最低限の金額しか渡さないようなこともない。けれども、一緒にいて気持ちが通わないと感じる。困ったことが家族内で起こっていても、自分のことを優先し全く関心を見せなかったり、風邪などで体調を崩しているときにも労わるようなことばや行動も全くない。こんな対人関係のフォームを持った人と一緒に暮らしていると、徐々に徐々に精神が病んでいく。気持ちが落ち込んだり、イライラしたり、うつ病を発症することもある。


 学校でも起こっています。「仲良し」「親友」と思っていたら、違う友達のところで悪口を言われていることがわかる。ほどよい対人関係のフォームを持っていれば、人のことを自然と信頼でき、お互いに思いやりを持ち対等な対人関係を作ることができますが、このような裏切りにあうと、そのフォームが瞬く間に崩れていく。とても不安になり、悪口を言っていた友だちの顔色をうかがうようになっていく。


 その人との物理的距離を取りましょう。それもできるだけ早くです。あなたの心が壊れてしまう前に。ほどよい距離が取れれば、それで十分です。いつも一緒でなければ影響も少なくなります。それが難しいときには、ほどよい対人関係のフォームを持っている人と会い、話し、あなたの持っているいつものフォームを確認しましょう。それがあなたの心を守ります。

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