• 市川里美

対人関係のフォーム(1)

 スポーツでは、その動作に「フォーム」という言葉を使います。野球でいえば「バッティングフォーム」「ピッチングフォーム」というように。ゴルフやテニスでも同じですね。繰り返される同じ動作の様子が「フォーム」と言えるでしょうか。それと同じように、対人関係にも「フォーム」があります。人と関わる際の繰り返される同じ動作・関わり方・パターンというものがあります。人と関わる時の表情、視線、口調、口癖、話す順番、相手にどのように合わせるのか。目上の人、友達、先生、後輩、子ども、相手によって変わりますが、それでもそこに一貫した関わり方が見られる。それはその人らしさとも言えるかもしれません。

 そのフォームの土台となるのは、ごくごく幼少のころの親との関わりです。生まれたとき、いえ、生まれる前から繰り返されている親との関わりが対人関係のフォームの土台となります。一番よく接する母親との関わり、父親との関わりが大きく影響すると考えられますが、母親、父親以上に大きく影響する人がいるかもしれません。小さい頃によく関わった人がそうだと思います。対人関係のフォームの土台となる幼少期の人の関わりは、永久凍土に埋め込まれた化石のように心の奥底にずっとあります。この心の奥底に刻み込まれたものは、無自覚に他者との関係に持ち込まれていきます。幼少期の近しい人との関係のありようが大人になっても対人関係に色濃く描き出されていくのです。


 もちろんその後の対人関係の経験がその上にどんどん積み重なっていきますし、そこでその人独自の対人関係のフォームが複雑に作りあげられてはいきます。残念ながら、どうやっても完璧なフォームはできないでしょう。不格好でバランスはよくないかもしれません。それでも人はいろいろと工夫をしてフォームに手を加えていきます。けれども、化石のように心の奥底に刻み込まれている幼少期の対人関係の土台の上に積み重っていくのです。奥底にあって簡単に見えないですし、そこにあることさえ自覚することがむずかしいのですが、見えないからと言ってなくなっているのではなく、そこにあります。


 その対人関係の土台が不安定であると、積み上げたものもどうしても不安定になってしまう。安定した良好な対人関係を築くことが難しく感じられる。人が信用できないということも感じられるでしょう。

 心の奥底に刻み込まれたものに気づくことで、対人関係に、心に変化がもたらされます。少しずつ気づいていきます。カウンセリングではその作業を行なっていきます。