「子どもは、3歳まで膝の上で育てなさい」いうことを聞いたことがあります。本当でもあるし、嘘でもあるように思います。子育てに何が正解かなどわからない。そのことをこの本で知りました。多くの心理学研究を丹念に読み込み、重ね合わせ、タイトル通り『子どもの養育に心理学がいえること』としてまとめています。「両親の離婚が子どもにとって有害か」「母親は働きに出るべきか」「体罰は心理的に有害か」「傷つきやすいのはどんな子どもたちか」などトピックに挙げられています。これらについて心理学研究からどのようなことが言えるか示しています。一つ一つの育て方に強力な関連性は示されないものもあれば、一方で強力な関連性が示されるものもあります。
私はこの本を読んで、子育てで最も大切なことは、その子の持って生まれた個性に合わせていくことではないかと考えるようになりました。親ができること、先に生まれていくばくか早く大人になったものが、子どものためにできることは、その子の個性、持っているものに合わせた関わり方をすることであり、それがその子にとっては一生の大きな支えとなるように思うようになりました。
不安でお母さんから離れることを怖がる子どもは膝の上で育てるくらいの気持ちでいるのがよいのでしょう。無理に母子分離することがトラウマとなる可能性も高い。一方、好奇心旺盛なお子さんにとって膝の上で育てられることは、がんじがらめでストレスとなってしまうでしょう。
子どもの育ちが複雑で、それだからこそ豊かであることを感じさせられます。「絶対にうまくいく」「これが正解」という育て方があれば安心できますが、それはないようです。「わからない」を抱えながら試行錯誤し、子どもの様子をみながらよりベターなものを選択していくしかないようです。
まずは子どもの個性を理解すること。幼稚園の園長先生のことばです。 「ゆりはゆりに、バラはバラに、すみれはすみれに。ゆりにバラを咲かせることはできません。お子さんがどんな花を咲かせるのか、それをみて育てていきましょう」
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