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市川里美

子どもの気持ちと親の気持ち〜子どもが本当の自分を生きるために

 自分の子どもがつらい思いをしていると思うと、同じように親もつらくなります。これはとても大切な共感です。境目のない共感で、子どもの気持ちなのか自分の気持ちなのかわからなくなってしまうほどですが、そのような共感があるからこそ、子どもに寄り添い、育てることができる。親はそのつらさを子どもとともに抱えて、子どもを支え、そして子どもはそのつらさに立ち向かえるようになる。


 しかし、そのような気持ちを親が受け入れられない時には、子どもを怒ってしまったり、無視してしまったりということが起きます。「いじめられた」「仲間はずれにされている」と聞いたときに親はとてもつらいです。子どもが成人しても「上司からひどい扱いを受けている」「夫婦関係がうまくいっていない」と知ると親はつらい。つらすぎて親の心が壊れそうになる。


 「そんなことたいしたことない」「それぐらい耐えられないでどうする」と子どものつらい気持ちを軽く扱ったり、それがないものとし、無視しようとして、自分の心を守ろうとします。あるいは「あなたが悪いんじゃないの?」「もっとうまくできないの?」と子どもを責め、怒りをぶつけてしまうことにもなる。


 子どもは小さい頃から親をみていますから、こういうことを言えば親がどういう反応をするのかをよく知っています。なのでつらい気持ちを感じていても「言わないでおこう」と心にしまってしまう。楽しいことは話せても、つらいことは話さない。大人になっても「つらいことは相談してはいけない」「迷惑をかけてしまう」「相手につらい気持ちを感じさせたくない」と一人で抱え込んでしまいます。もっと深刻になれば「こんなことを思う自分はダメな自分」「こういうことを思ってはいけない」と自分を否定し、明るく元気な自分を演じ、嘘の自分を生きるということにもなるでしょう。


 ただ、親自身もつらい気持ちを受け入れてもらったり、支えてもらった経験が少ないということもあります。怖くなってどうしたらよいのかわからなくて軽く扱ってしまったり、子どもを責めて終わらせてしまう。子どもにの中にそのようなネガティブな気持ちがあってほしくないと願ってしまう。

 つらい、悲しい、妬ましい、そんなネガティブな気持ちは心にあってもいいのです。あなた自身の大切な気持ちなのです。なかったことにしてはいけない。


 つらくて泣きたい時もあるでしょう。人を羨んだり、妬むときもあるでしょう。自分を守ろうと嘘をつくこともあるでしょう。そのような気持ちも自分の大事な一部です。それを認めてもらったときに心が健やかになる。「そうなんだ」「そういう気持ちなんだね」と受け入れてもらえるだけで安心できる。


 子どもがつらい時は、親もつらいです。カウンセリングでは子どもの心をどのように支えるか、子どもの気持ちをどのように受け入れるかということを一緒に考えていくということもします。子どものつらい気持ちを受け入れ流ことで、子ども自身が抱えられるようになり、子どもは本当の自分を生きられるようになります。不登校や引きこもりという問題が消えていくということも起こるのです。


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