電動アシスト自転車は、人の力をモーターの動力によって補助し、軽い力で走ることができるものです。急な坂道も楽に登ることができたり、少ない力で遠くまで行くことができます。人がペダルをこぐ力をもとにして動くもので、人がこぐからこそ電動アシスト自転車は走ることができる。逆に言えば、人がこがなければ動くことができないものです。その場にとどまったままになりますし、モーターの充電が0%になれば自転車自体とても重いものとなり、こぐことも押すことも大変になります。
この様子は、カウンセリングに似ていると思うのです。ご本人(相談者、クライエント)自らが進んでいこうとする力をアシストするのがカウンセラーで、ご本人がペダルをこがないことには動けない、そのままそこにとどまってしまうのです。クライエント自身の、変えたい、変わりたい、問題を解決したい、解消したいというエネルギーがないとカウンセリングは進みません。ですので、周りの人が「カウンセリングを受けた方がよい」と思っても、ご本人にその意欲がなければカウンセリングは空回りに終わります。カウンセリングへのエネルギーが出てこないときには、カウンセリングを始めないほうがよいでしょう。また、たとえご本人がカウンセリングを受けたいと思っても、あまりにも疲労しているとき、うつ病でつらい時にはカウンセリングを開始しないほうがよいでしょう。十分なエネルギーがないアシスト自転車では進むことができず、逆に症状や問題が悪化してしまうこともあるからです。
もう一つカウンセリングと電動アシスト自転車の似ている点は、アシストだけが機能であり、進むべき方向に勝手に運ぶことはしないということです。カウンセラーの役目はアシストすることです。カウンセラーが方向を示し、力づくで引っ張っていくことはしません。「カウンセラーが何も言わない。」「答えてくれない。」ということがよく聞かれます。それは、カウンセラーはアシストするだけだからです。方向も示しませんし、あっちへ行け、こっちへ行けという指示もしない。ご本人(クライエント)が自ずと進む方向に行くことをアシストするだけなのです。しかし、まったく方向を示さないというわけではありません。クライエントやその周りの人に危険がおよぶ場合や、大きな影響が生じる場合には直接的に介入(助言や指示)をすることもあります。しかしそれ以外は、アシストすることに徹します。クライエントから質問があったときにも、それに直接に答えることはせずに「どうしてそのような質問をしようと思ったのですか?」と尋ねます。その質問をしたくなった心を理解しようとし、その「心」の動きをとらえることをクライエントに促します。自分の心の動きにクライエントが自ら気づけるようにアシストする。実は、この「自ら気づく」ということがとても大事なのです。ですので、カウンセラーはアシストをするのみなのです。
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