日本では本格的なカウンセリングを体験した人はまだまだ少なく、いったい何をするのだろう、何を話すのだろうと思っている方も多いと思います。怒られたり、注意を受けたりするのではないかと恐れてしまう方もいるかもしれません。また「カウンセリングに行ってみたけれどよくわからなかった」という人もいるでしょう。
「カウンセリング」という名前がよく知られていますが、専門的には「カウンセリング」は心理面接の一つの方法です。心理面接とは、心の問題について話すことで変化をもたらすもので、いろいろな方法があります。精神分析、精神分析的心理療法、認知行動療法、催眠療法、遊戯療法、ナラティブセラピーなど500種類以上あるとも言われます。ですのでその体験は方法によりかなり違うものとなります。またカウンセラーと1対1で行うのではなく、家族が同席する場合もありますし、夫婦カウンセリング、カップルカウンセリングなどもあり、その形もさまざまです。この1年はコロナ感染対策としてオンラインツールを用いた心理面接もかなり広がり、方法はますます多様化しています。
ただ、どの方法にも共通するのは「利害関係のない人(カウンセラー、セラピストと呼ぶこともあります)と一緒に心の問題を考えていく」ということになると思います。秘密が守られ、安心できる場所で話していく。上下関係もありません。そのような中でことばにすること、話すことでのカタルシス(浄化)もあるでしょう。さらには言葉だけではなく、そこで感じたこと、思い浮かんだことすべてが、問題解消の糸口になっていきます。今イライラしている、悲しくなっている、落ち着かない気持ち、あるいはカウンセラーに対して話したくないと思ったり、嫌な気持ちになったり、カウンセリングをやめたいと思ったり。そういった自分の気持ちに気づき、カウンセラーに話していけること、それを一緒に考えていける、そのような関係を作ることが心理面接の本質なのだと思います。
心理面接を始めてすぐには何を話していいのかわからないこともあります。初めて会うカウンセラーに対して、安心して感じたままを言えるようになるには時間が必要となるでしょうし、隠しておきたい心の奥底にある自分の気持ちに気づいていけるようになるにはさらに時間がかかることもあります。数年かかることもあるでしょう。また、同じ症状、同じように思える悩みでも、お一人お一人は全く違う存在で、そこには同じものはありませんので、問題解消への道筋も、かかる時間もそれぞれ違ってきます。
何を話すか、どう話すかは気になさらずに、そのままいらしていただければと思います。
Comments