• 市川里美

エビデンスによらず、何かいい方法はないものかと考える。『発達障害は治りますか?』神田橋條治ほか著 花風社(2010)

 この本は精神科医の神田橋先生と作業療法士、臨床心理士、発達障害の当事者と出版社社長の対談がまとめられたものである。この本の中にはさまざまな視点が紹介される。しかしそれらには医学的なエビデンスは乏しいようである。神田橋先生にしか持ちえない“特別な能力”だからこそ出来ることではないかと私には思える。研ぎ澄まされた感覚や繊細な感性によるもので真似はできないとも思う。しかし先生の考えに臨床家としての背中を押される思いになったものがある。

 神田橋先生は代替療法を否定せず、サプリメント、パッチフラワーなどを薦める。盃半分の焼酎をお風呂に入れる焼酎風呂も薦め(酒量が減り、冷え性にもいいという)、プラシーボ効果(偽薬でも思い込みで良くなるということ)でもいいという。代替療法が「自分に合いそうかどうか考える。これが自己セラピーの始まり」であると。

 代替療法を取り入れることは自己セラピーの始まりであり、それは自己治癒力を上げていくということなるのではないか。さらには、前頭葉機能の発達を促すものとなると私は考えている。自分にとって何が効果があり、何が必要なのかを探索するということは、自分の身体、気分や感情、脳や内臓、自分を取り巻く環境、そこからの影響も含め、そういうものにしっかりと目を向け感じ取る、理解する、認知するということとなる。その作業は自分を客観的に観る力=メタ認知力を高め、前頭葉機能を育むことになるであろう。その作業は発達障害の方が有している脳の発達の偏りを小さくすることにもつながるのではないかとも考える。

 副作用がないと認められるものであれば試し、自分だけの処方箋を組み立てる。発達障害という名前で括られるが、ひとりひとり特性は異なるのだから自分に合う処方箋を見つけていかなければならない。春ウコン、グルテンフリー、ビール酵母などの栄養の視点、感覚統合療法、キネシオロジーなどの運動の視点、ほかにもさまざまな視点がある。このような情報を提供し、オリジナルの処方箋を組み立てるお手伝いをすることも臨床心理士の仕事だと考えるようになった。メタ認知力を高め、脳機能を発達させるお手伝いである。

 エビデンスがあると安心は出来るが、エビデンスを待っていては間に合わない。個人差は大きく、環境も関与する中では代替療法に確固たるエビデンスを持たせることは不可能でもあろう。代替療法のエビデンスはその人の中にしかない。

 神田橋先生は、このような代替療法の情報について「医療者と受益者はできるだけ情報を共有すべきだと思っています。」という。できるだけ多くの情報を相談者に提供するよう、またエビデンスによらずに工夫を重ねいくよう背中を押してもらえたと感じている。

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