講談社ブルーバックスのシリーズは大変ありがたい。科学研究の知見を懇切丁寧に解説してくれる。この本も食欲についてのこれまでの研究が詳細に書かれている。本当にありがたい。
「お腹が空く」というありきたりの現象がどのようなしくみによってもたらされているか。それは意識に上ることはないものであるが、実に巧妙なしくみが働いている。しかも幾重にもそのしくみが重なり合って、制御しあい、食欲というものを操っているのである。
視床下部の満腹中枢、摂食中枢機能、そこへは脂肪からの情報(リボスタット)、糖(グルコース)の量の感知システムの情報が届く。さらには次のニューロンでの複雑な情報のやりとり、レプチンやメラニン凝集ホルモン(M C H)、睡眠と深い関わりのあるオレキシンなどによる刺激を受け、食欲、食行動、内分泌機能を制御し、自律神経機能もコントロールして、体重や全身機能をコントロールする。さらには「食べものを得られた」「思いのほか美味しかった」という報酬の経験が刻まれて次の食行動へとつながっていく。
このように見ていくと、摂食障害についてはどのように考えたらいいのだろうか、とも思う。そのきっかけは、いわゆるダイエットであったり、容姿を気にしてのこと。そして環境やストレスから生じる心の問題と捉えられ、そこへのアプローチを心理療法やカウンセリングで行ってきている。しかし、このようなからだと脳のしくみを理解し、脳機能の失調と捉え、生物学、脳へのアプローチが必要ではないかと考えている。また過食、拒食での栄養不良による脳への影響も考えることが必要だろう。
心だけを取り出してみていくのではなく、体全体から見ていくことができたら、さらに有効なアプローチになるのではないかと考えている。
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