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「心の不調」がすべて「心」のこととは限らない。

市川里美


 まずは、ホルモンバランスのこと。甲状腺ホルモン異常では、うつ病によく似た症状が出てきます。血液検査でわかります。最近メディアなどでよく話題にのぼっているのは女性ホルモンのこと。女性ホルモンの一生の分泌量は、たったティースプーン1杯の量なのだそうですが、この少量の女性ホルモンが感情に大きな影響を与えます。生理前には気分が落ち込み、寝込むほどのこともありますし、攻撃的になって人に当たってしまうこともあります。


 更年期はまさにそのときですし、実は思春期にもホルモンバランスが整わないために感情が不安定になるのではないかと言われています。もっと大きくとらえると反抗期自体がホルモンバランスの不安定さによるものではないかとも考えられます。イライラしたり、突然不機嫌になったり、不安定になるとリストカットをすることもあります。反抗期の子どもの様子には「育て方が悪かったのか」「何か育て方を間違ったのか」と悩むようなことも、実は見当違いなのかもしれないのです。ホルモンのバランスのせいかもしれないのです。女性のみならず、男性もホルモンバランスの影響は大きいものです。


 また、女性は月経で、カルシウム、鉄分やマグネシウムなどのミネラル類が常に不足している状態であり、この栄養不足からも心が不安定になることもわかっています。その他、栄養摂取不足による低血糖や血糖値スパイク(血糖値が大きく揺れ動く現象。精製された食物摂取や食事のタイミングが安定しないことで生じやすい)ということもあリます。不足している栄養を意識して摂ったところ、心の不調が改善するということもあります。


 やる気が出ない、イライラ怒ってばかり、気持ちが安定しない、となるとどうしても「自分が悪い」「精神が弱い」「心が弱い」と自分を責めて、ますます気持ちが重くなってしまいますが、同じ症状、似たような感じでもその要因はホルモンという生理的なものから、栄養が要因のこともあり得るのです。自分の性格を責めることはしなくていいと思うのです。


 もちろんそれらが重なっている場合もあります。ただ「心」だけにアプローチをしていくことは危険なようにも思います。ホルモンバランスを調整する漢方薬でリストカットが収まるということもありますし、栄養バランスを考えることで著しい変化を起こすこともあります。心の専門家である臨床心理士がいうのもなんなのですが、「心」だけに焦点を当てすぎることには注意が必要だと考えられるのです。

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