辞書によれば「不安」とは、「気がかりで落ち着かないこと。心配なこと。また、そのさま。」とある。心理学や精神医学では、対象や根拠がはっきりしないままの漠然とした恐れを「不安」と言い、それが過度になり日常生活を脅かすレベルのものとなれば、精神医学的には「不安症」という診断名となる。一方対象や根拠がはっきりとしたものは「恐怖」と言い、日常生活に支障が出るものは「恐怖症」という診断名となる。「犬に噛まれた」という経験から犬が怖くなり、どこかに犬がいるのではないかと考えると怖くて外出できなくなる、ということに対して「犬不安症」とは言わず、「犬恐怖症」ということとなる。高所恐怖症も同様である。高所不安症とは言わない。
だが、不安も恐怖もそこで生じる感覚は非常に似ている。ソワソワと落ち着かなくなり、ビクビクした感じとなるし、判断力が低下し、どうしたらいいのかわからなくなることなどが起こる。身体症状としては、呼吸数、心拍数が上昇し、息苦しくなる、冷たい汗が出てくる、体がこわばるなどがみられる。不安を感じる時も、恐怖を感じる時も、同じような生理的反応がみられるということは、そこに同じ生理的メカニズムがあるということであり、そのあたりは、脳機能や脳内の神経伝達物質のはたらき、内臓の反応と脳とのつながりなどについて研究されている。
このような生理的反応は、自分の意思とは関係なく現れ、コントロールし難いものである。ましてや不快な感情、身体症状が生じるのであれば、非常に厄介なものとなる。対象が明確な「恐怖」であればある程度対処法も見つかりやすいのであるが、「不安」については、いつ、どこで起きるかわからない、ということがより不安を増幅させ、負のスパイラルに入ることも多い。「不安」は対象が明確ではないため、対処法が見つかりづらいということはあるが、それでも不安を引き起こすきっかけとなるものはありそうで、それをカウンセリングの中で探り、対処法を考えることで不安の低減につながることもある。
どんなことが不安を引き起こすきっかけとなるのか、不安がどこからくるのか、次回以降書いてみたい。
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