不安はどこから来るのか?不安はなんらかの刺激を受けて生起するものではあります。音や匂いなど、外からの刺激により視覚・触覚、嗅覚、味覚、聴覚などが反応し、不安という感覚が生じる。音でいえば、地響きのような重低音や黒板を爪で引っ掻く音による不安感や不快感は想像しやすいと思います。また、不安な気持ちを感じた時と同じような状況で、その感覚が呼び覚まされるというような、学習された不安も外からの刺激によって呼び起こされるものと言えるでしょう。一方で、外からの刺激ではなくとも、身体内部での刺激によって不安が生じることがあります。
女性ホルモンが感情に大きく影響することはご存知の方も多いでしょう。更年期障害やP M S(月経前症候群)での感情の変化は、女性ホルモンに大きく影響されています。女性ホルモンの分泌量は生涯でティースプーン1杯ぐらいと言われています。ほんの少しのホルモンによって感情が大きくかき乱されることに驚かされます。今では思春期の感情制御の難しさも、ホルモンバランスが大きな要因であると考えられてきています。これまで、成長することへの不安や抵抗(ピーターパン・シンドローム)や、自立に向けた大人への反発や反抗、アイデンティティの確立のプロセスといった精神的混乱が論じられてきましたが、その背景にはホルモンバランスの問題が横たわっているようです。(思春期の不安やイライラに対して、更年期障害に処方する漢方薬の服用が有効なこともあります。)
以前には更年期障害は女性特有の疾病と考えられていましたが、男性にも生じると言われています。「中年の危機」にもホルモンバランスが関わっているのでしょう。子どもたちが成人し独立する頃に生じる寂しさや不安感を「空の巣症候群(Empty nest syndrome)」と言いますが、ここにもホルモンが影響しているのでしょう。
思春期、更年期だけでなく老年期にも不安が生じやすくなります。高齢者のうつ病、自殺が多いことは知られています。脳内のホルモンバランスに変化が生じ、不安や怒りが高まりやすくなることや、気分が落ち込みやすくなるなどがあります。現実的なストレスが見つからないようであれば、ホルモン分泌に目を向けて服薬などで対処することは、選択肢の一つとなります。産後うつに対してもこのような視点で見ていくことは有効でしょう。
ホルモン分泌は自分の身体の中で生じていることですが、その自覚は持ちにくいものです。すぐに感情の変化と関連にづけることはなかなか難しいことと思います。しかし、その視点を持たずにいると、対処の方向性が間違ってしまうことが起こってくるでしょう。不安が生じるタイミングと月経との関連(周期性)を見ることや、自分が今どのライフステージにあるのかを見ていくと、対処方法も見つかりやすくなるでしょう。。
当オフィスのカウンセリングでは、このような視点からもお話をうかがいます。ホルモンバランスの問題が大きいようであれば、医療機関受診をおすすめすることもあります。カウンセリングよりも服薬というアプローチが優先されるからです。しかしながら、不安の背景にあるものは複合的なことも多く、その場合には服薬だけでなく、カウンセリングも並行して行うことでより不安に対処しやすくなると考えられます。
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